第13回腫瘍免疫学術総会に参加しました

平成29年6月25日(日) 京都のメルパルク京都会議室にて、第13回腫瘍免疫学術総会が開催され、参加しました。

福本学先生(東北大学名誉教授、東京医科大学特任教授)の座長で、勅使川原計介先生(東洞院クリニック)から「免疫チェックポイント機構とPD1/PD-L1阻害剤について」、大久保祐司先生(東洞院クリニック)から「細胞培養からみたリンパ球採取」について、それぞれ講演がありました。樋脇一久先生(ひわきクリニック)からは「リンパ球採取における手技の留意点について」、さらに症例報告が松本博先生(松本クリニック銀座)、福島偉先生(みたかヘルスケアクリニック)、大川洋史先生(大川外科胃腸科クリニック)、小西長生先生(芦屋グランデクリニック)、堀井高久先生(ほりいクリニック)、大久保雅彦先生(大久保内科外科クリニック)の喀先生からありました。

勅使川原先生は、IL2インターロイキン2という免疫チェックポイントを最初に発見された研究者の一人で、免疫研究のトップランナーです。免疫バランスが、活性化と抑制の天秤の上に成り立っていること、リンパ球系のシグナル受容体、がん細胞等のシグナル受容体についてのこれまでの知見について説明がありました。シグナル受容体とは、細胞が免疫力を発揮する際に必要な、鍵穴のようなものです。活性化にしても抑制にしても、この鍵穴に鍵がはいらないと細胞の反応が始まらないというものです。

1980年代に研究が始まり、マウスでの検証からヒトでの臨床研究、創薬まで20数年かかっています。CTLA4という受容体、PD1という受容体に対して抑制作用があることが確認され、その作用をブロックする薬(ブロック抗体)がヤーボイ、オプジーボとして開発された経緯の説明がありました。活性化の受容体(アゴニスティック抗体)の研究は、イギリスで進められていたそうですが副作用が激しく、開発が途中で中止されたとのことです。

これらの免疫チェックポイント阻害薬の特徴は、自己免疫疾患を生じてしまうリスクがあること、高頻度の副作用としてリンパ球の減少、皮膚などの色素減少、かゆみ、疲労などがあるそうです。ただCTLA4>PD1>PD-L1の順番で、副作用が少なくなることが観察されていてPD-L1抗体の開発が待たれているとのことでした。

オプジーボの適応について、治療抵抗性肺がんの効果をみたところPD-L1の発現率が5%以上の群で有効であることが確認されたとのことです。キイトルーダについてもPD-L1発現率50%以上を対象とする研究がされており、PD-L1の発現が、免疫チェックポイント阻害薬の効果について重要な指標となっているとのことです。

抗PD1抗体に対する耐性、治療抵抗性は、がん細胞が特有の変異(痕跡)を消失させてしまうことで起きているという米国ジョンスホプキンス大学の研究報告の紹介がありました。したがって、この免疫チェックポイント阻害薬では、がん細胞の排除は不可能という結論についても、2015のサイエンスの研究報告から説明がありました。

大久保先生からは、NK細胞培養にあたって採取時に脂肪、赤芽球(赤血球になる前の若い細胞)、顆粒球(いわゆる白血球)の混入が、培養液を汚してしまいNK細胞の培養を難しくする要因になっているとの説明がありました。現在の技術的課題として、NK細胞の免疫抑制の程度がどれほどであるか、抗がん剤や放射線治療を行った際のNK細胞のダメージの程度がどれだけあるか、これらを明らかにする技術は未だないとのことでした。NK細胞の攻撃力は、活性化の跳ね上げと細胞数の増加にかかっている、ということになります。また、血液からのNK細胞採取は、リンパ球群として採取する以上の技術もまだないとのことでした。採取から培養センターに搬送する時間も重要な因子で、12時間以内であればNK細胞の培養に問題ないが24時間では、不可能になることが示されました。

その他、放射線治療の影響、食事内容、摂取時間と血中脂肪濃度との関係、NK細胞活性の測定条件など活発な質疑応答があり、ANK免疫細胞療法が繊細かつ緻密な技術者の力で行われていることが改めて確認できました。

 

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