腸内細菌とがんについて

腸内細菌とがんについて

慶應義塾大学医学部内科学入江潤一郎講師から、腸内細菌と疾患の関係の話を聞く機会がありました。入江先生は、糖尿病、肥満症、慢性腎臓病を専門とされています。

まず、腸内細菌は、人それぞれ持っているものが違うので、人の指紋のように腸内細菌の種類・分布を分析することで個人を特定できる程、個人個人で違うものだそうです。大枠としてファーミキューテス門、バクテロイデス門、プロテオバクテリア門、アクチノバクテリア門の4つのグループからなる細菌叢(さいきんそう)またはフローラとよばれる腸内細菌集団を作っているとのことです。この4種類の腸内細菌の割合や数量が、疾患に関係しているということが注目され始めています。

肥満や糖尿病などではファーミキュウテス門の腸内細菌が多く、バクテロイデス門が少ない偏りがあるそうです。この腸内細菌の偏ったバランスを調整しなおすことが疾患の治療法と注目されているわけです。

腸管は栄養を吸収する際に、身体にとって毒となるもの、炎症を起こすものを取り入れないようにバリアを作っています。しかし、このバリアは不要なものを100%排除するほど完璧ではなく、健常者でも食事をすると不要物をバリアからすりぬけさせてしまい、特に、高脂肪食やタバコなどを摂るとその透過率が上がってしまうそうです。ただ血液検査の炎症反応データが上がるほどではなく、まもなく元にもどるそうです。

この腸管バリアの機能については、小腸や大腸など腸管の細胞だけでなく、腸内細菌が大きな役割を持っていて、先ほどのバランスが偏る話にもどるのですが、バランスの悪い腸内細菌叢では不要物を、どんどん吸収して血液中の不要物が増えてしまいます。そして異物を見つけた免疫細胞は、それを当然攻撃するので身体の中で炎症反応を起こしてしまいます。この炎症反応が、血糖値を下げるインスリンの細胞の反応性を妨げてしまうなど、2型糖尿病や肥満症、さらには慢性腎臓病の原因(?)または悪化要因にもなっているそうです。

このように腸管バリアが慢性炎症と強く関係することは、生活習慣病として位置づけられるがんも、過剰な活性酸素産生による遺伝子傷害、変異遺伝子の蓄積、突然変異からアポトーシス機能の喪失、がん化へという流れから発症する事を踏まえると、腸管バリアが強く関連することが考えられます。つまり、入江先生は、糖尿病や肥満、腎臓病の視点から研究されていますが、がんについても腸管バリアの機能を良好にしておくことは有用であると推し量られます。

腸管バリアの重要な守り手である腸内細菌を維持するには、有用菌そのものを摂取する方法、オリゴ糖や食物繊維などをとることで有用菌を育成する方法、メトホルミンという糖尿病薬などが期待できることが報告されているとのことです。

臨床医また研究者としては、コンビニなどで見かけるヨーグルトについて、ほんとに良いかどうか今までなんともいえなかったが、腸内細菌叢(フローラ)の機能、腸管バリアの役割、その機能保全の方法などの研究報告から、今後は、有用な治療手段として腸内細菌の調整が期待されるとのことでした。

入江先生は腸内細菌と疾患との関係についての研究者としてトップランナーの一人です。糖尿病、肥満症については、臨床での実際の治療手段の一つなることが目前になっています。まだ、がんと腸内細菌との関係については、十分な研究報告はありませんが、今回のお話から、食事療法やサプリメント、生活習慣の改善など、がん治療の際に多くの方々が取り組まれていることが、腸管バリア、腸内細菌の調整からも有用であると実証されることを期待したいと思います。

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