「放射線の量と質が異なると生物効果はどう違うのか?」ホルミシス臨床研究会からの報告

4月23日(日)ホルミシス臨床研究会が東京都大崎のニューオータニイン東京で開催され、参加しました。

安藤興一先生(群馬大学客員教授、福島県立医科大学特任教授、歯学博士、医学博士)を講師に特別講演「放射線の量と質が異なると生物効果はどう違うのか?」がありました。冒頭、川嶋朗代表理事(東京有明大学教授、元東京女子医科大学助教授)が、低線量放射線の治療効果について、臨床的な実績に加えて、科学的な根拠を明確にしたいとのご挨拶がありました。

安藤先生は千葉市の放射線医学研究所(放医研)http://www.nirs.qst.go.jp/index.shtmlに38年間在職された、放射線治療の第一人者です。放医研では、がん細胞への高線量放射線の影響を研究されていました。

特別講演では、被曝による細胞生存率の測定技術であるコロニー形成法の解説がありました。がんと放射線影響の研究には、一般の生物学との相違点として再発要因を考慮するとのことです。このため生存率については、より少数の生存細胞も把握対象とする必要があり、生存率の目盛りは対数を使うとの説明がありました。1/10、1/100、1/1000と生存率と放射線量との関係を計測していくそうです。

高線量と低線量での細胞染色体の切断数の計測において、線量に加えて時間の要素、すなわち、速い照射とゆっくりの照射で、細胞障害の現われ方が変わってくるとのことです。高線量では、時間の要素の影響は少なく、低線量では、ゆっくりするほど細胞障害の幅が大きくなり、同じ細胞障害効果を得るための合計線量はより多く必要となります。これはがん細胞を殺すための障害の視点からの話ですが、細胞の被曝抵抗力という視点で見れば、ゆっくり照射すればするほど、合計線量が増えても生存率が高く出来るということです。

正常細胞の放射線感受性の個人差についての研究では、皮膚から線維芽細胞を採取培養し、コロニー形成法により細胞生存率を調べたそうです。個人差には線量、線質、時間、照射場所の4つの要素が少なくともあり、その結果は人智を越えるものとのことです。パズルThe T(4枚の板を組み合わせて様々図形を作るゲーム)を例に、たった4枚の板であっても、指示された図形が思うように出来ないゲームだが、試行錯誤しているうちにいつの間にか出来るという面白さがある。放射線の細胞影響もこれと似ており、思った結果を出すことは簡単ではなく、しかし試行錯誤をしているうちにいつの間にか、良い方法が見つかるものだ、とのことでした。

照射された細胞の周囲の照射されていない細胞が、あたかも照射されたかのような反応をしめすバイスタンダー効果、低線量照射による抵抗性誘導(ヨネザワ効果)について実験方法の説明がありました。プライミング照射(抵抗性誘導のための低線量照射0.45Gy)の実験から、骨髄造血幹細胞数が増えることが検証されたことや、ビールを飲むことで染色体損傷が減った(=放射線抵抗性を得た)という観察研究、マウスの腹部照射でがん細胞の肺転移抑制が観察された研究、腹部照射をしても抗生物質の投与により転移抑制効果が消失することから腸内細菌が関与していることの研究など解説がありました。

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