日本赤十字社医療センター病診・病病連携懇談会に参加しました。

平成28年2月18日(土)日本赤十字社医療センター病診・病病連携懇談会(於 セレリアンタワー東急ホテル)に参加しました。

懇談会では化学療法科国頭英男部長(正式には国は旧字)による「がん治療の現状」、骨・関節整形外科伊藤英也部長による「股関節症の治療の現状」について、講演がありました。

国頭部長は、「里見清一」のペンネームで「医師の一分」など新潮新書から多くの著作を発表されています。講演では、高額な抗がん剤が、医療保険財政を圧迫していることについて、欧米の医療費事情と我が国の高額療養費制度と比較しながらお話がありました。米国スローンケタリングがんセンターでは、たとえ新薬であっても、既存薬と効果が同じであれば使わない!なぜならクスリの値段が数倍にもなっていてコストだけ跳ね上がるだけであり、治療効果は同じだから。日赤医療センターにおいてても、同様に新薬を使うかどうかはコストと効果を見合いながら決めているとのことでした。実際に、この方針で新薬を病院として採用しない判断をした、との報告もありました。

また、免疫チェックポイント阻害薬オプジーボについて、従来の抗がん剤との比較で延命効果があるのは確かだ。この新薬の特徴として、効果が見込める患者かどうかを判断する指標がない、効果が発現する時期がわからない(投薬当初、画像所見などで効果がないようにみえても、後から効果が確認できることがあり、それを見定める期間も不明)、効果がある場合に途中で止めたらどうなるのかわからない、効果があるというのは延命だけでなくほぼ治っている状況もふくむ、など従来のクスリと使い勝手が相当に違うことを指摘されていました。

そして、一番の問題は「使い始めたらやめられない」ことだと。低額な薬の値段であれば問題にならないかもしれないが、極端に高額なクスリであり、年間に1千万円単位、毎月100万円単位で薬代が必要になるが・・・いったい誰がこのお金を出すのか?本人負担は高額療養費制度で10万円程度で済むが、残りは医療保険財源で賄うという今の現状を、このまま維持することは不可能。すぐに底をつく、しかし、だからといって患者を前にしてオプジーボを使わないことは出来ない!という極めて答えが出しにくい壁にぶつかっている、とのお話でした。

そして、この問題の存在は明らかなのに、欧米でもスローケタリングがんセンターの新薬の効果とコストの評価判断などは珍しい事例であり、日本ではなおさら誰も考えようとしていない現状を危惧されていました。誰も考えていないから私が問題提起をせざるを得ない!と、声を大きくされていました。

伊藤部長からは股関節症の外科的治療の現状について骨きり術、人工関節置換術などの特徴、さらに磨耗防止のための材料改良、日本人に多い発育生の股関節症など詳細な説明がありました。

がん治療について、当窓口では標準治療と先端医療、そして保険診療と自由診療という組合せをベースにご相談をさせていただいてきましたが、標準治療も高額な薬剤支出問題が保険財政を圧迫する時代となり、制度的な変革がありそうです。生命保険の分野でもマイナス金利の影響で「特定疾病保障保険」という、例えばがんになったときに相当の一時金を給付する商品が販売中止になっています。がん治療は、色々な情報を踏まえながら設計することが求められている時代と、改めて認識したところです。

 

 

トラックバックURL